生まれて間もない赤ちゃんの泣き声は、産声から始まり、何かを伝える全ての手段において泣いたり、四肢を動かしたりして、自分の気持ち・状況を伝えます。
しかし、生後4~5ヵ月頃から(中には生後6~7ヵ月まで続く赤ちゃんもいます)泣き声ではなく、明らかに大声を出しているような、叫んでいる・裏声のような声を発するようになります。
これが、俗に奇声と言われており、正常で発達段階の過程で必ず通る道です。
奇声には、主に4つの意味があると言われています。1つずつ見ていきます。
奇声を楽しんでいる時
喃語よりも言葉(赤ちゃんの中での言葉の発達という意味)発達した時、聴力も発達し、生まれた時よりも周囲の音・赤ちゃん自ら発する言葉の音も、よく聞こえるようになっています。
同時に、周囲の音と自分の声を聞き分けられるようにもなって、それを楽しんでいる時もあります。
この聴力と言葉が発達した事で、大きな声を出すようになります。
自分で大きな声を出せるようになった、続けて長く声を延ばせるようになった、というのが楽しくて、嬉しいのでしょう。
また、奇声をあげている時に、お母さん・家族の人達が「そんな声も出るようになったのね」、「大きな声出して、何か楽しいの」等と言って、スキンシップを図ると、赤ちゃんは非常に満足感と達成感、受容されているという嬉しさが増します。
(これは、愛着形成を促進させて、母子間の絆、母子関係の良好にする効果があります。)
赤ちゃんによって「あーっ」、「わー」、「キー」、「キャー」等と様々ですが、個々によって奇声の長さ・強弱・回数・頻度が異なります。
興奮している時
例えば、何かに夢中になって遊んでいる時、自分の興味のある物・初めて見る物を触ったりいじったりして遊んでいる時等です。
嬉しくて興奮して、テンションが上がっている状態で、奇声以外に手や足を動かす事もあります。
また、大好きなお母さん・家族が奇声に反応して赤ちゃんの元へ行ったり、一緒に遊んだりすると、より奇声を上げたり笑ったりする事も多くあります。
また、褒めたり、一緒に軽く小さめな声で「わーっ」等と言ったりすると、よりテンションが上がる事もあります。
外出先のスーパー等で奇声がある場合、見た物で何かを思い・考え・感じ取って奇声が上がる、と言われています。
出先に限って、または出先の時に奇声が多いという場合は、外的刺激に対して、良い意味で感受性が高く想像力・思考力が高いと言われています。
逆に、出先で奇声を上げなくても異常ではありません。
赤ちゃんにも性格・好みや傾向があって、既に一人前の人間です。ひとりの個性として受け止め、大きな迷惑にならない限りは怒ってはいけません。
奇声をあげた時、どんな状態でも怒るのは厳禁と言われています。
怒ると、赤ちゃんはビックリして泣くのが多いですが、怒り過ぎると“サイレントベビー”と言われる、泣いて伝える・教えるという行為をしなくなります。
これは、今後の成長過程において妨げとなり、母子健康(親子関係)が成立しない、人間不信になる等と言われています。
そして、思春期や成人、場合によっては中年以降・壮年期になって、何か異常をきたす・問題を起こす可能性が高いと言われています。
必ずしも、上記の問題等を起こすとは限りませんが、臨床心理士が目につけるポイントとなっています。
断言ではなく予測ではありますが、大半の方が幼少時代、特に0~2・3歳時に何らかの逸脱(望ましい子育てを受けなかった)があった赤ちゃんに、その兆候が多く当てはまっていると言われています。
気分が優れない・機嫌が悪い時
疲れたり眠かったりする時に、奇声を上げる事があります。
大人で例えると、疲れてため息をつく、愚痴を言う等に当てはまる感覚です。
特に、1日の疲れが出やすい夕方に多い傾向があり特徴でもあります。
また、その背景には疲れ以外、夕方から徐々に暗くなってくる景色に、何となく不安や寂しさ、怖さを感じるから泣く・ぐずる・奇声をあげると言われています。
赤ちゃんや乳幼児・学童期前半の子は、一般的に暗い場所を好まない傾向があり、暗い場所=怖い・不安と言われています。
怖いのと不安が同時に重なり、奇声を上げる事でお母さん・家族が反応して近くにいるという確認ができ、安心する為の意味合いももっています。
また、実際に体調が優れない・不快感があった時に、まだ上手く言葉にして伝えられない為に、そのもどかしさから奇声を上げる事もあります。
大人で例えると、ストレスを感じてカラオケに行って、大声を出してスッキリしたい・ストレス発散させたいというった感覚です。
そういう時は、優しい口調と言葉で話しかけ、同時に原因を探り対応していきます。
排泄面や食事面の事でなく、体調不良でもなければ、気分転換が一番有効です。
奇声を上げ始めたら、外に散歩に行く、静かな音楽をかける、絵本を読む、一緒にTVやDVDを見る等して、気を紛らわすと同時に、お母さんも一緒に遊ぶ・接する事に徹底します。
いつの間にか、奇声を上げる事はなくなり、穏やかになったり落ち着いてきたりします。
自己主張・思いを聞いてほしい時
赤ちゃんでも、今は○○をしたくない、そんな気分ではない、もっと遊んでいたい、ずっと側に居て一緒に遊んで構ってほしい等、欲望が出てきます。
それでも、生活リズムは大切で、ある程度の時間になれば、遊びを切り上げて食事にしたり、お風呂に入ったりします。
そんな時、高い大きな声を上げて、赤ちゃんなりに自分は○○したい、と言わんばかりに奇声を上げます。
赤ちゃんにも、欲求や理想をもっていて、満たされると満足するのですが、満たされないと不満足となり、自己主張を始めます。
これは、成長過程で極当然の事で、いずれはこの思い・経験から、しつけが生まれ、しつけを実施していく事で学んでいきます。
そんな時は、「おもちゃも少し休憩ね、おもちゃもまた一緒に遊ぼうって言っているよ」、「お風呂から出たら、少し遊べるよ。待っていてね」、「ママが包丁でトントン終わったら、一緒に遊ぼうね」等と、今はけじめをつけて違う行動へ移さないといけない、という事を伝えます。
同時に、赤ちゃんの気持ちを受け止め、受け止めた上で、次もある、少し待ったら・経ったらまたできる、といった、プラン提供をすると、意外とスムーズに分かってくれる事があります。
この時、大切なのは、お母さんが言った事や約束を守る事です。
赤ちゃんでも、最初のうちはごまかしが利くのですが、月齢や日々の体験が進むにつれて、約束をしっかり覚えていきます。
約束をしたのに約束が実現しないと、赤ちゃんはお母さんを疑うようになります。
そして、次回、何か約束した時には、言葉が言えるようになって、「○○やるって言ったよね?」等と確認・問い詰める時がやってきます。
まだ、このように確認・問い詰めるのであれば、母子関係や親子の絆・信頼関係の破綻は軽症で修復可能ですが、何も言わず黙っている時は、危険信号が点滅しています。
この時、心の中では“約束しても、約束は果たしてもらえない。
何、言っても無駄だ”、“どうせ、今回も約束を守ってもらえないんだろうな・・・”
等と、悲しい結果になってしまいます。
忙しいお母さん・家族から見たら、「1人で遊べて良い子ね、成長したわ」、「お陰様で食事が作れた。何とか作れて間に合った」等と思っています。
ここで、目に見えない隙間・溝が発生してきます。
このようにならない為にも、約束はしっかり守る事が今後の親子関係で重要な事です。
赤ちゃんとのコミュニケーションを深めよう
娘が生後4ヵ月過ぎて、間もなく5ヵ月になる頃、奇声を上げました。
最初は大きな声にビックリしましたが、機嫌や声の調子もあったのか、何種類かの奇声に笑った事もありました。
奇声に悩まされた事は無く、むしろ一緒に笑っていたのが多かったです。
時に、大きな声で興奮気味に何度も何度も奇声を上げた時は、さすがに「シーだよ、シー」と言い聞かせていました。
娘の機嫌によっては、私の人差し指を口元に当て「シーだよ」と言っても逆に興奮して、より奇声が長くなった事もありました。
しかし、何度もジェスチャー付きの「シーだよ」を繰り返していたら、小さな声になりました。
この時は、思いっきり褒めて良い事・適した行動をとってくれた事を伝えると、最後に1回、喜んで大きな奇声を上げました。
また、いつも行くスーパーで、物を見て何かが分かったらしく、奇声を上げました。
店員さんや他のお客さんが、微笑んで「元気で良いね、元気が一番よ」、「楽しそうね、何を見つけたの?あ、買ってもらったのかな?」等と声をかけられると、照れて私の後ろに隠れながらも、嬉しそうに喜んでいました。
きっと、自分に注目してもらえた、意識してもらえた、声をかけてもらえた等と、誇らしさを感じていたと考えています。
お母さん・家族としては、場所やその時の環境(外出先や図書館のような静かな場所等)によって、困ってしまう、恥ずかしくなってしまう事もあります。
しかし、奇声にも意味があり、まだ言葉が上手く話せない、赤ちゃんからのメッセージでもあります。
先ずはその奇声をよく聞き、何時か、赤ちゃんがどんな状態かを確認して、接する事が大切です。
奇声も言葉の1つで、コミュニケーションでもあります。
赤ちゃんともっとコミュニケーションを深めて、より良い関係・楽しい育児時間を送られてほしいと思います。
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