我が国で結核は、1950年代以降、罹患率・死亡率と共に低下していますが、他の先進国と比べると依然として罹患率は高いのが特徴です。
また、赤ちゃんが罹患する時は一番、そばにいる母親に結核が発見される事がある為、家族内感染が重要な感染経路である事を念頭におかなければならないです。
同時に近年、我が国では、高齢者の発症が背景にある事と、罹患した赤ちゃんが10年後・20年後に発病する恐れもある疾患です。それだけに、予防接種を行い発症の軽減・予防する事に努める事が大切です。
記事の目次
結核の原因
グラム陽性好気性生桿菌の結核菌による感染症です。
気道から感染し、全身の臓器に結核病変を起こします。
患者(他の赤ちゃん、大人・老人、家族等)からの飛沫感染・空気感染によって、肺に感染巣を作ります。
そして、増殖・繁殖していきます。
結核の症状
①“初期変化群”と呼ばれるもので、肺に感染巣を作った後、所属リンパ節に結核性病変が起こります。80%は、この段階で初感染巣が石灰化して、発病しないで治癒します。
②初感染の場合、ツベルクリン反応陽性によって、結核と確認する事が可能です。
③結核菌が血行性・リンパ性・管内性に広がると、肺結核、結核性髄膜炎、粟粒結核、胸膜炎、骨・関節結核、腎結核を起こします。
④発病は、感染して1年以内の事が多い特徴があります。
⑤感染による罹患後、10年後、20年後に再び発症する恐れがあります。
結核の特徴
罹患の多くは高齢者ですが、近年は乳幼児・小児、若年者も発症していて、現在、全国で毎年2万人以上の患者さんがいます。
小児の結核は、病発期には無症状の事が多く、年少児ほど家庭感染が多い傾向が見られています。
この背景には、母親が活動性結核の場合、その子どもの約50%は予防的化学療法を実施しないと、生後1年以内に発病してしまいます。
また、易感染宿舎では、初感染で全身に急性粟粒結核を発症して、死亡に至る場合があります。
日本を含む世界的に、AIDS患者の多剤性結核菌による感染症が問題になっています。
結核のケア
結核に対する入院中の一般的な流れを書いていきます。また、メインのケアは肺炎のケアになるので、そちらについても順に書いていきます。
入院時のケア
罹患した場合、基本的に入院治療となります。
病院の規模・特徴によって異なりますが結核病棟か小児科病棟へ入ります。小児科病棟へ入院となった場合は、厳重な隔離を強いられます。
菌が陰性になっても、隔離を継続します。
結核病棟の場合は、陰性になったら隔離を解除できます。安静と、確実な内服治療が重要になります。
多くの赤ちゃんが、隔離・安静によるストレスを抱え、苦痛が大きいです。
また、自由に・思うように遊べない、母親・家族と離された感が非常に強く、心身共に耐えるしかない状態を強いられる事になります。
赤ちゃんの病態・状態を配慮して、病棟のレクリエーションによる適度な遊び・運動、自由時間の日課が設けられており、それを厳重に守りながら遊び・運動を行う事態となります。
初期治療が終了して回復してくると、排菌が無ければ退院となります。
多くは、発病後1年間くらい内服を継続する必要がある為、退院後も内服治療は継続になります。
この為、正しい時間に・正しい薬・正しい量を・正しい経路で確実に内服を実施する事が大切になってきます。
退院直後は、過激な運動や疲労を避ける生活を提供する事も大切です。
赤ちゃんは久しぶりの家、家族との制限・隔離がない空間、遊びに興奮している場合が多いです。
ジャンプしたり走ったり、踊る、夢中で好きな遊びをする、なかなか寝ない・寝ないでも遊ぼうとする等、赤ちゃん・子ども独特の特徴があります。
体力が戻って、体力維持・薬効効果が安定すれば、また元通りの生活が可能である事を伝え、退院直後・又は退院してから2~3日はゆっくり過ごす事をお勧めします。
肺炎のケア(結核中に使われるケア)
では次は肺炎のケアをみていきます。
綿密な観察が重要
呼吸困難を伴う事がある為、継続的に細かい・十分な観察が必要です。
観察項目として、発熱・熱型、悪寒戦慄、全身倦怠感、頭痛、四肢痛、呼吸数・呼吸状態、咳嗽、喘鳴、顔色・チアノーゼ、胸部の聴診、痰の色・性状、機嫌、啼泣の強弱、哺乳力・摂取量、食欲、活気、下痢、嘔吐、脱水症状、痙攣を観察します。
安静
体力の消耗を最小限にする為、安静臥床を保つようにします。
常時、安静では、安静による心身の疲労・ストレスが生じる為、解熱後はベッド上で遊べるよう、おもちゃ・絵本・ぬいぐるみ等、その赤ちゃんが気に入っている・好きな遊びを提供します。
結核による各症状の辛さ、隔離・安静・薬物療法等、全ての環境に赤ちゃんは不安定な状態となっている為、母親をメインに家族の面会時間を長くしたり、状況に応じて付き添いをしたりして、赤ちゃんが安心できる環境を整え、安静・治療を促すようにします。
この場合、多くは医師の許可を元に、病棟の看護師から要請がきます。要請があった場合は、可能な限り赤ちゃんの側にいて、心身の安静を促し回復に繋がる事を支えます。
室温・湿度
室温は20℃前後、湿度は60%程度を保ちます。病棟の空調で自動設定されて保たれている事が多いです。
また、冬季に暖房中は加湿器を使用して、乾燥を防ぎます。
退院後も上記を継続させると、風邪やインフルエンザ等の罹患が防止できます。
症状の緩和
呼吸困難について
赤ちゃんが呼吸しやすいように、寝ている場合は抱っこしたり、ベッド上に座らせたりします。
月齢の大きい赤ちゃんの場合は、クッションを抱っこしたり、テーブル等を使って前屈みになったりして、呼吸をしやすいように促します。
また、必要時は医師の指示で酸素吸入がされる場合があります。
咳嗽について
室内の温度・湿度を的確に保ちます。特に湿度は、十分に保つよう意識します。同時に埃、寒冷が咳の誘発因子となる為、避けます。
口腔内を拭き取る又はうがいを行い、水分摂取を促して、気道の湿潤を保つ工夫をします。
痰を排泄しやすくする目的で、ネブライザーによる吸入が実施されます。口元・鼻元を覆う形で持って、吸入薬が吸い込まれるように援助します。
赤ちゃんは痰を出せない為、口・鼻腔から吸引を実施する場合があります。
吸引による苦痛を生じますが、実施後は呼吸しやすく、痰を飲み込み新たな咳嗽が重なる事が回避される為、吸引のメリットがあります。
水分・栄養補給について
水分・栄養補給、電解質補正の目的で、静脈内持続点滴が行われる事が多いです。
赤ちゃんが発熱・多呼吸等で哺乳量・食事摂取が困難な時は、入院中の食事以外に好みのもの・飲める・食べられる物を少量ずつ与えます。
また、飲食後は嘔吐がないか確認する為、直ぐに離れてはいけないので注意が必要です。
清潔について
発熱・呼吸困難時は入浴を避け、全身清拭を実施し清潔を保ちます。発汗がある為、皮膚がくっついている頸部・腋下・脚の付け根・陰部は特に丁寧に拭きます。
また、寝衣交換も併せて行います。下痢をしている場合は、可能な限り臀部浴又は洗浄を実施し、皮膚トラブルの発症を予防します。
同時に、ガーゼを微温湯で口唇・口腔内を拭き取り、口腔内の清潔と雑菌繁殖防止も保持します。
結核の予防
・結核病患者からの感染予防…罹患している人とは接触しない。
・BCGの予防接種…乳幼児早期・生後3~4ヵ月に実施するのが望ましいです。
結核に感染・発症した場合、隔離を余儀なくされた上で治療となります。
閉ざされた・限られた室内・状態で、徹底した治療が開始されます。結核病棟へ入院の場合は、偶然にも赤ちゃん・乳幼児、低学年の小学生がいれば触れ合いが設けられる為、良い意味での刺激にもなりますが、必ず入院しているとは限りません。
赤ちゃんにとって、家族・慣れてきた自宅と離れる事はとても大きな心身のストレス・負担、不安定になります。
同時に、お母さんが一番、不安・心配・自責傾向が強く、精神的に弱ってしまう方もいます。
赤ちゃんの月齢が低ければ低い程、“産後うつ“の発症や、産褥期の症状回復の遅延を起こす状態になってしまい、赤ちゃんの面会・付き添いが不可能になってしまう事も考えられます。
仮にお母さんが結核を患っているのであれば、自分の為・赤ちゃん家族の為に、赤ちゃんと一緒に治療に励まれてほしいと思います。(この場合、強制的にでも治療を強いられます)
そして、完治に向けて・完治後の楽しい生活に向けて頑張ってほしいところです。
まとめ
赤ちゃんの状態によって、面会数・1回の面会時間が長くなったり、付き添い時間が設けられる・要請があったりします。
この貴重な時間に備えて、家族全員が体調を整える事も大切です。
赤ちゃんの予防接種には、同時可能な予防接種があります。
同時接種する事で、接種忘れがない事と、赤ちゃんが病院に行く回数が減る事で、心身の負担が少なるという利点があります。
BCGを実施する事で、発病予防効果が50%という高い有効性も報告されています。
以上の事を踏まえて、忘れないで予防接種を実施し、結核を発症しないように努めて下さい。
赤ちゃんが病気して、治療や入院すると同じように家族の方々も苦痛を生じます。
予防接種で発病が減少する利点を有効に活用されて、穏やかな毎日を送られて下さい。
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